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Music Review
Wild Frontier
Gary Moore
Tadahisa Shinkawa
July. 2022

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せのおすそ分け 

Share Happiness.

演奏する人の知力、体力、イマジネーションが最高潮の時に、名盤は生まれると思っています。ハッとするようなアレンジ、楽器の使い方、ハーモニー、メロディ。
名盤が産まれる瞬間、想像するだけでワクワクします。録音したスタジオの雰囲気とか、働く人達とか。

例えばKaren Carpenterの声。あんな歌声を目の前で聴いたら、おそらくびっくりを通り越して、失神するのではないかと(笑)
参加ミュージシャン、エンジニアは彼女の歌声を聴いて、「この音楽を広く多くの人に楽しんでもらいたい」と心の底から願ったと思うんです。自分の仕事人生を賭して臨んだろうなって。

マネージャーはもとより、スタジオを掃除してた人、コーヒーをいれてくれるおばちゃんにいたるまで、何度もレビューされる音源を鼻歌交じりに歌えるようになったりして。。。

音源のリリースはその場にいた人が味わった至極の時間「幸せのおすそ分け」なんだろうと思うんです。レコーディングはそんな「マジックな時間」の連続だったはず。

音楽のポータビリティ化が進んで久しく、リスナーは手軽に音楽を楽しめる環境が整いました。どこにいてもストリーミングで、あらゆる音楽が楽しめる。もう、まるで大きな試聴機が目の前にあるみたいな環境です。
音楽を作る側の想いとは関係なく、この状況はおそらくずっと変わらないと思います。
でも、本当にそれでいいのかなと、ふと考えたりします。

音楽は自分の気持ちを代弁してくれる大切なものです。そんな音楽を手軽に楽しめることは最高ですが、ミュージシャンがスタジオにいた時に奏でた「幸せのおすそ分け」、「マジックな時間」にリスナーが少しでも近づくことができたら、人はもっと音楽を好きになってくれるかもしれない。ほとんど人が今まで感じたことがない、この究極の音楽体験を提供する場をつくることは、自分が仕事をする上で、一番大切にしている夢です。

そんな究極のリスニングスペースができたら、子供のころのギターヒーロー、Gary MooreのWild Frontierを聴いてみたいなって思っています。彼のキャリアの中で、間違いなく最高傑作。名盤です。1曲目から最後まで駄曲なしの素晴らしい作品。アイルランド民謡とハードロックを程よくブレンドした感性は他の誰も描くことができなかった世界。高校3年生の時、東京公演すべて観に行ったのはいい思い出です。

Tadahisa Shinkawa

PROFILE 

新川 宰久

2003年 日本初のレコードショッピングモール「サウンドファインダー」をローンチ。その後インディーズレーベル「First Call Recordings」立ち上げ(新人募集中)。 2019年 有楽町阪急メンズ東京に「GINZA RECORDS & AUDIO」オープン

https://www.instagram.com/ginzarecords/

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