TRAINING

France
2017.1.29 〜 2.5

This is the Bordeaux person.

これが、ボルドー人だよ

今回の研修、一言で表すならば“食にまみれた7日間”だった。ワイナリーで感じた生産者の想い、田舎町での素朴な家庭料理、痛快なほどに賑やかな市場の風景。そして葡萄の木のように、ボルドーという地に強く根を張ったレストラン。


そのレストランとは、ボルドーワインのインポーターが経営する『レクスキ』というお店。今回はこのお店で研修をする予定となっていた。
『レクスキ』は高い建造物に囲まれた狭い路地にある。周りの薄暗さも相まってか、路地に面した大きなガラス窓からは店内の暖かな光が漏れていた。
研修でお店に立てるのは3日間のみ。なにかを感じ取って帰ろう、そんな想いが自然と胸に宿っていたのを覚えている。


右も左もわからず、瞬く間に過ぎていった初日。そして2日目の朝、シェフから突然呼び出された。
「今晩、うちの社長へ向けたサプライズ周年パーティを開催する」そう一言告げたシェフは、期待と緊張を隠しきれていない様子だった。
3月のボルドーの日没は早い。街頭に灯りがつきはじめ、いざ開店となると次々と人が押し寄せる。そして気づいた時には店内が超満員に。中にはちらほらと見覚えのある顔があり、来場者のほとんどがワイナリーの生産者だと気づく。皆この店と社長のために駆けつけていたのだった。

パーティの最中、社長がポツリと言った。
「これが、“ボルドー人”だよ」


店内の賑やかさとは対照的に、とても静かな口調だった。そしてその一言の裏側には、これまでの喜びや過酷さ、信念が凝縮されていたように思う。
その日その場所に訪れていた人々にとって、国境や人種、文化の違いは存在しなかっただろう。社長の驚いた顔、皆の嬉しそうな顔、シェフのほくそ笑んだ顔。全てが昨日のことのように思い出せる。


この地に寄り集まった、愛すべき“ボルドー人”たち。
今までどれだけの苦労があったのかは知る由も無いが、彼らの道のりは葡萄の実のようにこれからも色濃く染まっていくのだろうと思う。


帰国後、そんなことを考えながら店に立つ。そこには、研修前よりエプロンの紐をきつく縛る自分がいた。

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