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Music Review
Blue In Green
Miles Davis
Junichi Harada
August. 2017

ph

07 子座のピアニスト 

Leo pianist

湖に浮かぶ、いかにもヨーロッパの古城といった趣きのジャケット写真。ジャズ好きの間では「お城のエヴァンス」として名盤の誉れ高いアルバム、『Bill Evans at The Montreux Jazz Festival』。レコーディングされたのは僕が生まれた1968年。言わずもがなスイス、レマン湖畔の美しい街で開催されるモントルー・ジャズ・フェスティバルでの演奏。大好きなピアニストの代表作が録音されたこのフェスティバルに毎年訪れるようになって4年が経つけど、未だにこのジャケットを見る度に感慨深く思う。

この獅子座のピアニストを初めて聴いたのは、彼のリーダー作ではなくMiles Davisの『Kind of Blue』。これは僕が初めて買ったJazzのアルバム。つまり、その後多大なる恩恵を授けてくれる事になる3人の偉大なアーティスト、Miles Davis、John Coltrane、そしてBill Evansを最初から引き当てるという幸運に恵まれた訳です。
当時はギター演奏に熱中し、音楽を学んでいた。その過程でJazzを学びたい!いや学ばなければ!とにかく何かJazzと呼ばれる音楽を聴いてみよう!…という流れで、おそらくは入念に書物を調べまくった結果、歴史的名盤と言われるKind of Blueに辿り着いたのだと記憶している。名盤であると同時に異色作とも言えるこの作品に魅了された最大の要因は、幽玄とも言える美しいハーモニーと、全体を支配する静謐なムード。仮にJazzとの出会いがこの作品でなかったら、ここまでJazzにのめり込んでいなかっただろうと思う。

ところで、このアルバムは今までに3回買い直しています。最初に手にしたのは、今ひとつ音質的魅力にかける国内盤のアナログ。2番目は、過去の名盤がCD化されまくっていた80年代後半にリリースされた輸入盤の再発CDで、これは今考えると笑えるほどの粗悪さでだった。ジャケットに使用された写真がオリジナルと全く別物であるばかりか、左右反転していて、マイルスが左利きになっているというお粗末さ(海賊盤ではなくコロンビアからの正規再発ですよ)。そんな経緯があり、いつかは初版のアナログ、しかも状態の良い物を手に入れようと探していたところ昨年念願が叶った。これが本当に凄い。

目を閉じて聴いていると、まるでマイルスやエヴァンスがすぐそこで演奏しているかのような錯覚に陥ってしまう。いや、もちろん「そんな訳は無い」と頭では理解しているのだけど、「絶対そこで演奏している」と思わずにはいられないリアルな音像。こんな甘美な妄想を真面目な顔で話していると、大抵笑われます(当たり前だけど)。もはやお酒を飲んでいる時のネタ。でもね、A面最後に収められた「Blue In Green」の美しいCoda。あの部分を聴いている時は、どうかこのまま永遠に終らないでくれ、と真剣に願わずにはいられない。しかし、音楽は無情にも終わりをむかえ、アナログレコードは無情にも盤をひっくり返さなければならず、僕は今日も葛藤の中で目を開く。

Happy Birthday Mr. Bill Evans.

Montreux Jazz Festival Japan
CEO / Executive Producer : Junichi Harada

PROFILE 

田 潤一 Junichi Harada

株式会社ヴィジュアルノーツ代表取締役。スイス名門音楽フェスティバルの日本開催版である「モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン」を主催し、実行委員会委員長とエグゼクティブ・プロデューサーを兼任。音楽を中心に、大人が楽しめる洗練された文化を啓蒙するWeb Media「ARBAN」CEO兼エグゼクティブ・プロデューサー。

https://visualnotes.co.jp/
http://www.montreuxjazz.jp/
http://arban-mag.com/

 

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