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Album Review
A Certain Smile A Certain Sadness
Astrud Gilberto & Walter Wanderley
Yoshihiro Sugawara
June. 2017

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05 と思い出の音楽 A Certain Smile
A Certain Sadness

雨の季節に思い出すアルバムがある。
僕が19歳だった1988年、兄の友人が急用で使えなくなった青春18きっぷを譲り受けて、地元仙台から東京へ日帰りの旅に出たことがあった。まず向かったのは、当時まだ六本木にあった伝説のレコード店『WAVE』。マニアックな品揃えが有名で、見たこともないジャケットにワクワクしつつ、田舎者の僕はそわそわ緊張したことを覚えている。 「今日は自分が全く知らないアルバムを、勘だけで1枚買ってみよう」と、当時話題になっていたワールド・ミュージックのコーナーに向かう。そこで目があったのがこの洒落たジャケット。一か八かの勝負に出た。

過日の雨の日。
通っていた専門学校が休講になり、退屈した僕は父の車を借りドライブに出かけた。このアルバムをダビングしたカセットテープをBGMに海沿いを走る。すると、車内がまるで1960年代のフランス映画のような雰囲気に包まれた。アストラッド・ジルベルトの涼しげでキュートな歌声、ワルター・ワンダレイの少し霧がかかったようなハモンドオルガン。そして、恥ずかしながらフランス語だと思っていたポルトガル語の響き。それに相まって聞こえてくる車のボディを叩く雨音、ワイパーの動き、モノトーンな風景。映画『男と女』の世界に入り込んだような感覚が忘れられない。勘違いも幸いし、当時ヌーベルヴァーグに夢中だった自分にとって、たまらなくロマンティックな気分の雨の日を過ごした。

それから15年後の2003年、アストラッドのデビュー40周年を記念した日本制作のベスト・アルバム “ザ・ガール・フロム・ボサノヴァ” のジャケットデザインを担当させていただいた。19歳の自分に自慢したい出来事だった。

このアルバムは1966年にジャズの名門ヴァーヴからリリースされた、“イパネマの娘” で知られるボサノヴァの歌姫と、ブラジルのファンキーなオルガン奏者の共演盤。軽快かつキュート、そしてちょっぴり切ない雰囲気が魅力な1枚。雨の日のドライブはもちろん、お酒のお供にもぴったりなアルバム。 除湿効果は抜群で、お酒が進みますよ。

boris graphic engineering
Art director / Graphic designer : Yoshihiro Sugawara

PROFILE 

原 義浩 Yoshihiro Sugawara

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アートディレクター/グラフィックデザイナー

1969年宮城県生まれ。タワーレコード仙台店ストア・アーティストなどを経て単身東京へ。2002年ボリス・グラフィック・エンジニアリング設立。ミュージックジャケットのアートディレクション/デザインを中心に活動中。

[主に手がけたアーティスト]
The Birthday, EGO-WRAPPINʼ, MONDO GROSSO, Monday満ちる, bird, 畠山美由紀, GLIM SPANKYなど

http://www.borisgraphic.com/
https://www.facebook.com/pages/boris-graphic-engineering/196251620452576

 

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